独立技術者に求められる”発信力と”交渉力”

技術者に求められる「能力」は、いろいろあります。

技術の専門知識や、問題解決力、そして、コミュニケーション力など、さまざまな能力が求められることは、いまさら言う必要のないことだと思います。

独立した技術者には、それ以外にもさまざまな「力」が求められます。

例えば、「発信力」

独立した技術者は、自分自信が「商品」ということになります。
その商品を売ってくれる原動力は、何かというと、自分自身の、価値の発信にほかなりません。
まず自分という存在を、顧客の耳に届くように発信しなくては、仕事を取りようがありません。
旧知の縁や、身近な企業とのコネクションで、仕事を受けることを伝えることも発信です。
講演会や、寄稿などにより、自分の名前と技術を発信することもあります。
最近では、技術者でもウェブ発信をうまく使って、知名度を上げて、引き合いにつなげている方も増えています。

企業内技術者においては、発信力が最も求められる時は、実は、就職活動の時ではないでしょうか。

自己分析を行い、自分の価値、売りを、採用担当者へアピールします。

その後、晴れて入社し、配属され、技術の前線で業務をしていくわけですが、その業務において、自分自身の発信力は、それほど必要とされなくなります。
就活の時の、自分自身を活性化させるような不思議な感覚は、実は、仕事について慣れてくると日常的には感じにくくなります。

もちろん、技術営業部隊などで、自分の扱う開発品を顧客に提案するときに、発信力や提案力は必要とされます。
しかしそれはあくまで取り扱う製品であって、自分自身を発信することではありません。

独立技術者は、自分自身と、その力を、広く発信する必要があります。

例えば、「交渉力」

企業内の技術者は、交渉ごとが必要なことは、そうそうありません。

調達品の価格交渉や、組織間の業務分担の調整・交渉はあると思います。

しかし、自分自身について交渉するケースは少ないでしょう。

あるとすれば、自分の評価やポストについて、上司にアピールして評価を上げてもらったり望みの仕事につけてもらうために、交渉が存在するかもしれません。

しかし、欧米では一般的のようですが、日本ではそのような事例はあまりないのではないでしょうか。

独立技術者は、自分自身の仕事の報酬額を、顧客と交渉する必要があります。
相手の言いなりでは、適正な対価をもらえる保証はありません。
もっと良い報酬を払ってくれる相手がほかにいるのに、安い仕事を受け続けるのはばかばかしいことです。
そして、いざ業務を受けるとなっても、相手が本当に自分自身の業務の価値にみあった報酬を払うかどうかは誰も約束してくれません。
業務が追加されたり、成果条件が厳しくなることは日常的にあります。
なりゆきで、うまみの少なくなった仕事をやり続けるのは、交渉の観点がないためです。

当初の仕様からのずれ、追加項目などを明確に示し、報酬を見直す必要があることを顧客に示して、交渉に持ち込むことが必要です。

発信と、交渉。

これらは、自分自身の価値向上のために必要な行動です。

日本人は、控えめで、優しいことを美徳とします、それは本当に素晴らしいことです。
そして、人文系の人よりも、技術系の人の方が、さらに自己主張や交渉には縁遠い性格である傾向があるかもしれません。

自分自身を発信することは、ともすると、自己アピールであり、恥ずべき事だと考えたりお金を要求することが、あさましい、いやしいこと、という価値観が存在するかもしれません。

しかし、技術者といえど、独立したら「事業者」であり、自分自身という商品を売るセールス担当、マーケッター、ブランディング担当でもあるのです。
企業内では、それらのことを、営業部門や、企業ブランドの看板によって、借りているにすぎません。
企業は、自社の製品を必死にアピールして、ブランディングして、価格交渉して、収益を上げています。

自分自身を売るのは自分自身。

自分の仕事の価値を自分自身で適正に示すことができず、不当な要求に対して引き受けてしまうと、自分自身が損をするだけではなく、他の独立技術者の迷惑にもなります。

逆に、独立していない企業内技術者であれば、自分自身のブランディングや交渉を
しなくてよい、ということは全くありません。

スキルを磨くのと同様に、自分自身の価値の発信を行っていくことで、仕事のステージを上げていくことにつながりますし、処遇に対して正当な要求をすればこそ、成果に責任を負い、それをクリアすることで成長できることになります。

発信や交渉をしないということは、ステージを上がることやそのための困難に対して逃げているという側面もあるのではないでしょうか。

技術者にとって苦手科目である’発信’と’交渉’

この2つを強化できるように意識することは、独立者だけでなく、すべての技術者のキャリア形成において重要な事でしょう。